「入札の公告から締切まで2週間。図面を広げて拾い出しを始めたが、他の案件も重なって、結局は深夜と休日で仕上げている……」
公共工事の積算で時間がかかるのは、計算そのものではありません。図面から数量を拾う作業と、内訳書に添える説明を書く作業です。この2つは性質が違い、AIで短くできるのは後者だけです。どこを任せてよいかを分けて考えると、使いどころがはっきりします。
自社での使い方は、AI Labに相談できます
GREENで使い方を調べた後は、AI Labの相談窓口へ。どちらも合同会社SOL COMODAが運営しています。時間がかかっている作業を一つお聞かせください。送信だけで契約や支払いが発生することはありません。
自社の使い方を相談する
AI Labに相談本記事では、現場での走り書きメモから現況報告を「短時間で言語化」し、隣接地所有者への分かりやすい説明資料の策定から、複雑な先例のリサーチまでを大きくにスピードアップさせるための、具体的なステップを公開します。
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積算のどこに時間がかかっているか
積算の作業は、大きく4つに分かれます。どこに時間がかかっているかで、打つ手が変わります。
| 工程 | 中身 | AIの向き |
|---|---|---|
| 拾い出し | 図面から数量を読み取る | 向かない(後述) |
| 単価と歩掛の確認 | 積算基準、単価表、見積の照合 | 任せない |
| 計算 | 数量×単価、諸経費率 | 任せない(積算システムの仕事) |
| 書類の作成 | 内訳書の名称、施工計画、提出書類の文章 | 向いている |
上3つは、間違えると入札そのものに影響します。ここは従来どおり人と積算システムの仕事です。AIが効くのは4つ目、つまり文章を書く部分です。
「文章なんて全体の1割だ」と思われるかもしれません。しかし実際には、施工計画書、工程表の説明、品質管理計画、安全衛生管理計画といった提出書類に、案件ごとに数時間かかっています。ここを短くできれば、拾い出しに使える時間が増えます。
数量の拾い出しをAIに任せてはいけない
図面を読み込ませて数量を出させる、という使い方を考える方は多いと思います。現時点では勧められません。理由は3つあります。
- 図面の読み取りが正確ではありません。縮尺、寸法線、引き出し線の対応を取り違えます。数字が1桁違っても、それらしい答えを返します
- 間違えたときに気づけません。拾い出しは根拠が数量計算書に残るからこそ確認できます。AIが出した数字は、どこをどう数えたのかを追えません
- 入札金額に直結します。拾い落としがあれば赤字になり、過大であれば失注します
拾い出しを早くしたいなら、AIより先にCADデータからの数量算出や、積算ソフトの機能を見直してください。図面がCADで届く案件なら、そちらの方が確実です。
単価と歩掛も、確認は人が行う
公共工事の積算では、発注者が定めた積算基準に沿って単価と歩掛を用います。これらは改定されます。AIが答えた数値が最新である保証はありません。
また、地域や発注機関によって扱いが異なる項目があります。国、都道府県、市町村で基準が違う場合、AIはその区別をつけられません。
単価と歩掛は、発注者が公表している最新の基準と単価表で確認してください。AIに聞くのは、基準の条文が読み取りにくいときに、平易な言葉に直してもらう用途までにとどめます。その場合も、元の条文と突き合わせてください。
施工計画書の下書きを作る
ここからがAIの出番です。施工計画書は、案件ごとに書き直していても、構成と書きぶりは共通しています。
過去の施工計画書を2〜3件渡して、今回の条件を伝えます。
これは当社が過去に提出した施工計画書です。 同じ構成と書き方で、今回の工事の施工計画書を下書きしてください。 【過去の施工計画書】 (本文を貼る) 【今回の工事】 ・工事名:〇〇 ・工種:〇〇 ・工期:〇〇 ・現場の条件:(交通規制、近接構造物、施工時間帯など) ・特記仕様書で指定されている事項:〇〇 条件: ・過去の計画書に無い工法や材料を書き足さないでください ・数量、金額、日数は空欄にしてください(こちらで入れます) ・指定されていない安全対策を勝手に追加しないでください
最後の3行が要点です。これを書かないと、AIは計画書らしく見せるために、実施しない対策や使わない工法を書き足します。提出後に「計画書に書いてある」と指摘されると、その対応に追われます。
出てきた下書きは、現場を知っている人が確認してください。とくに、現場の条件と合わない記述(存在しない設備、使えない搬入経路など)が混ざっていないかを見ます。
内訳書の名称をそろえる
意外に効くのがこれです。同じ工種なのに、案件や担当者によって名称の書き方が違うと、後から集計できません。
過去の内訳書をまとめてAIに渡し、「同じ内容を指していると思われる名称をグループにしてください」と頼むと、表記のゆれが一覧で出ます。これを見ながら、社内で使う名称を決めます。
そろえておくと、次の2つが楽になります。
- どの工種でどれだけ利益が出ているかを、後から集計できる
- 過去の実績を参照するとき、同じ名称で探せる
ただし、発注者が指定した名称がある場合は、そちらが優先です。社内用の名称と、提出書類の名称を分けて管理してください。
過去の積算を振り返る
落札した案件と、しなかった案件を並べてAIに渡し、「書き方や構成にどんな違いがあるか」を挙げさせる使い方があります。
ただし注意が必要です。これは書き方の傾向であって、落札できなかった理由ではありません。公共工事の落札は価格と評価点で決まります。AIが挙げた違いを、そのまま原因として扱わないでください。
実務的に役立つのは、「同じ工種で、過去にどれくらいの金額で応札したか」を素早く探せる形にしておくことです。過去の内訳書をまとめて渡し、工種ごとに整理させれば、次の積算のときの目安になります。
公共工事だからこそ気をつけること
民間工事と違い、公共工事では次の点に注意が要ります。
- 入札に関わる情報を外部のサービスに入れない。応札予定金額、積算の根拠、他社との比較検討の内容などは、入札の公正性に関わります
- 発注者から受け取った図面や特記仕様書の扱いを確認する。資料の取り扱いについて指定がある場合があります
- 入力した内容が学習に使われない設定になっているか。利用規約とデータの取り扱いに関する記載を確認してください
1つ目が最も重要です。金額に関わる情報は、外部のAIに入れない運用にしてください。施工計画書の文章を作らせるだけなら、金額を入れる必要はありません。
社内でルールを決める際は、「入れてよい情報」と「入れてはいけない情報」を具体的に書いて配ってください。「機密情報を入力しない」とだけ書いても、現場では判断が分かれます。
まず試すなら、提出書類から
次の案件で、施工計画書の下書きを一度AIに作らせてみてください。金額も数量も入らず、失敗しても影響が小さい部分です。
そこで使い方の感覚をつかんでから、品質管理計画や安全衛生管理計画に広げます。拾い出しと単価の確認は、最後まで人と積算システムの仕事として残して構いません。そこを無理に置き換えようとすると、かえって確認の手間が増えます。
工事書類の作成や、現場と事務の二重負担については、工務店の業務効率化と1級建築施工管理技士のAI活用でも扱っています。あわせてご覧ください。
現場以外の事務作業から手を付けたい場合は、どの業務からAIを使い始めるか(AI Lab)にまとめています。議事録、見積書、メール、資料作成、問い合わせ対応など、業務ごとに分けて説明しています。
「AIを導入したけれど、結局使いこなせていない…」 そんな状況に陥る最大の原因は、ツール選びではなく「導入の手順」にあります。
実務において、労働を「消費」から「資産」へと変えるための、具体的な3つのステップをご紹介します。
今ある業務を「AIが得意なこと」と「人間がやるべきこと」に分類します。
単にAIに質問するのではなく、自社のノウハウやルールを組み込んだ「指示の型(テンプレート)」を作ります。
特定の「詳しい人」だけが使う状態を脱し、チーム全員が同じ精度でアウトプットを出せるマニュアルを整備します。
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まずは、あなたの現在の状況で「どの業務から見直せるか」を整理することから始めてみてください。
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